ナイフ考ーGerber Paraframe I

 ちょっと気になったもので今まで買った事の無い雑誌を買ってみた。

 自分も中学ぐらいの頃、よく工作用の小刀をギンギンに砥いで無駄に紙を切ってニマッとしていた時代がある。ナイフに魅せられる気持ちは解るつもりでいたが・・

 そこまでの衝撃こそ無いがSM雑誌「S&Mスナイパー」やゲイ雑誌「さぶ」をはじめて見た時に近い感覚がある。
 ちょっと理解しきれない。
 編集者側も読者にとっても恐らく彼らの世界の中では「ナイフ」と云う道具が相当に大きな存在であろう事がひしひしと伝わって来る。まぁ専門誌なのだから当然そうであるべきなのだろうが、「災害時に役立つナイフとその使い方」と云う特集に惹かれたのに この雑誌の購買層に今更説明するまでも無い事は書いてない。
 ただ、「こう言うナイフいいよねぇ〜」と云う共感を求めたカタログ的な記事に終始していたのが期待ハズレだった。


 で、見ていて ふと「俺あんなナイフ持ってたよな」と気になって探して見つからなかったモノが 数日後にひょんな所から出土してきた。

 ガーバーのパラフレームとかと云うナイフ。→http://www.gerberuk.com/index.php/product/id/489
 なんと云うか 思い出はあるけど想い入れが無いのである。



 2008年。
 アラスカくんだりにまで登山に行くという面倒な事を始めたわりにツメがとことん甘く、アンカレッジまで来て{最悪カヒルトナ氷河の上まで来て}から「あ、アレが無い!」なんてな事が幾らかあり、その一つがナイフだった。
 いや、良く覚えてはいないのだけど出国時にあえてナイフを持って来なかった様な気もする。
 どこのアウトドアショップでもオピネルみたいな必要充分・シンプルなナイフは手に入るものと思っていたから「荷物軽量化のためあっちで揃える物リスト」に入れていたかも知れない。
 が、実際アンカレッジのREI{大型アウトドア店}等で探してみると ○安くて ○軽くて ○シンプルなナイフがどうも無い。
 想定している顧客層がシルベスター・スタローンか、ブルース・ウィルスのナイフしか置いていなかった。
 「北の国から」の頃の吉岡秀隆の目をした自分は選びあぐねて一番安い{っても30ドルくらいしたと思う}このナイフを手に取った。
 「・・ちょっと重いけどなぁ」
 ハンドルの部分が肉抜きされているとは言え 投げて的に刺す事も充分出来そうな重みがある。
 そして刃物が無いと困ると言う事をまず最初にこの商品のパッケージが教えてくれたのも覚えている。{開け口が無いガチガチのプラスチック包装。}
 そして最初にこのナイフで試し切ったのもこのプラスチック包装で、無情な事にこのナイフならばあっても大差無い事を告げられた。
 切れぬのだ。

 ブレードを出す時、伸ばしたポジションでロックが掛かる時、そしてまた畳む時のクリック感は気持ちが良い。
 グリップの握り心地も申し分無く、次のアクションに心がはやるが ブレードに触れてみると模造品かと云う程皮膚に食い込まない。
 一応ナイフっぽい形の硬い金属だからそれらしくは使えたのだが、こうも切れないとナイフを出していている時に緊張感も生まれない。
 そのお陰で こいつが山で切ってくれた最大のエモノは寝具のエアーマットであった。
 手からポロッとこぼれて その自重によりプロライト4にさっくり突き刺さった。
 その切れなさが故に幸い裏まで貫通しなかったのはせめてもの救いだったのだが・・これがあの狂気の切れ味のレザーマンだったなら そもそもテントの前室で作業をしていた事だろう。


 まぁそんなでずっと存在を忘れていたこのナイフを久し振りに発掘したので 使えるようにして使える場所に装備したいと思ってこう云うナイフの研ぎ方を調べてみたが、波刃のついたステンレスを研ぐのは敷居の高い事のようで 
[rakuten:sekinohamonoya:10008219:detail]
 簡単にやりたきゃ↑こんなのが必要となる。
 うーむアウトドアで食う人間として持っていても良いとは思うけど、3000円のナイフのために1万円近い物を買うのはどうも納得が行かない。


 そして色々見ているとどうも「ナイフは砥いで使う物だから買ってすぐの切れ味でナイフを評価するな」と云う風潮が{恐らく↑に書いた雑誌の顧客層あたりの人らに}あるようだ。「そういう人らはオルファカッター使っとけ」と。
 まぁ裸でナイフと一緒に寝て安らぎを感じる人らにはそれで良いのかも知れないが、そうでない自分は言いたい。
「切れないナイフにはパッケージに“ナイフキット{未完成品}”と書いて売るべし!」