WAFA講習

 普通に暮らしていて、事故や怪我にあう事なんてなかなかある事ではない。
 僕らの仕事場は山の中で、日常生活と比べればまぁ可能性は上るにせよ でもしょっちゅうあるとも言いがたい。
 今まで遭遇した怪我や死亡事例を思い返してみて、「もっとあぁしていればあの人は助かった{後の経過が良くなった}のに・・」と思う事もあまり無い。{もっと冷静になれれば、と言う自省は常にあるけど。}
 めったにない事故等の現場で、そこに居る傷病者の大体は実際 放っておいて死ぬほどの怪我でもない人か/どうしようも無く死に行く・死んでいる人かのどちらかに分けられるだろう。
 自分の両手が人の生死に介在する機会が訪れることは まぁ殆ど無いことだろうと思う。
 そう思うとやるせない気もするが、しかしそこにこそ僕らの究極の存在意義がある。


 消防や赤十字の救命救急法は毎年受けている。
 だからあのマヌケに口を開けた人形の胸を押す行為は 結構身に染みた物だと思う。
 だけどそこで教わる「こうなったらどうする?」と言う問答に「そこで救急車がすぐに来れない状況だったら?」と言うオプションは存在しない。
 基本的にフツーの人がフツーの市街地で直面しうる範疇しかカバーしていない。これは自分たちアウトドアで生業を立てている人間達にとって十分な物とはとても言いがたい事だ。
 自分でインターネットを始め色んな所から学ぶ事もできる。実際今回の講習で目新しい知識がそこまで多量に得られたかというとそうでもない。
 けど知識が生きた物に変わり、整理がついて取り出しやすくなったと言うか やはりエキスパートの人に一貫して、しかもプログラムとしても完成された物を習うと云うのは手っ取り早いなぁと痛感したコースだった。


 そして、山や砂漠や大海原のような特殊環境に行く事が無い人であれ、必要な時に必要な医療がすぐ受けられる「当たり前の環境」というのが意外と簡単に崩れ去る事を先の大震災で学んで良いと思う。
 数日間の講習程度ではもちろん誰も“ブラックジャック”になれるわけではない。だけど、いざという時 ただ誰かの助けを待つのではなく 自分の持つ可能性を最大に使える人間になりたいならば これはぜひお勧めしたいコースです。


 リンク→{WFA世界で選ばれているウィルダネスファーストエイド| WMAJ


 そして、今回やはり 毎年受けている消防の救急法の有り難みも再認識させられた。
 CPRという一秒を争う作業を現場で効率的に行う為にはやはり、日頃からの鍛錬以外に手は無い。ちゃんとした指導者の下 ちゃんとした機材で それも無料で練習させてくれるのだから あれ程コストパフォーマンスの高い物はありえない。
 そりゃぁ消防で今回の講習位のレベルの事が習えれば理想だが、それは流石に高望みしすぎだろう。
 しかし日本山岳ガイド協会辺りはもうちょっとこの分野で前進しても良いのにと思う。
 ・・あの小冊子はやっぱり完成度が低すぎる。と、これも再認識できたのだった。→{外傷用イソジンと JMGA ガイドマニュアル ファーストエイド編 - ざるの洗い方