タシギ

 鳥を拾った。


 日暮れ後に 小瀬田の県道のど真ん中にいやがったもんで、車をUターンさせて横道に停め、行き交う車が通り過ぎるのを待った。
 まさか「かわいそうだから獣医さんに連れて行ってやろう」なんてな生娘みたいな発想ではない。
 今 鳥の写真を撮らないといけない。撮った事のない鳥を普通ありえない距離で撮る絶好のチャンスだ。撮り終えたあとはうちの息子と猫が喜ぶだろうな、と思った。
 行き交う車にギリギリ潰されずに済んだその鳥は、模様と嘴の長さから 今まで撮った事のある鳥ではない事、顔面に怪我があることだけ確認でき、そのまま車に積んであった空のデイバッグに放り込んでうちに帰った。
 図鑑を見ると タシギという鳥らしい。


 ひとまずダンボールに移しておいたら、うちのあんこ{猫}が嗅ぎ付けて箱をひっかく。
 ふと思い当たって 知人から鹿児島県立博物館の人に連絡して貰うと、標本にでもするために冷凍して着払いで送って欲しいと云う話になった。
 残念だったな、あんこ。
 自分の用を済ましてしまおう。写真を撮った。

 改めて見るとやはり顔面の傷は とても助かるような物ではない。
 翌日まで置いておいて 死んだら冷凍しようか。
 いや、それだと自分が寝た後あんこが食べてしまう可能性があるし、このまま衰弱死も冷凍庫で凍死も大して変わらん。新鮮な内に凍らせた方が標本としてマシだ。
 ジップロックに入れて冷凍庫につっこむ。
 やはり察して、弱弱しくもジップロックの中暴れようとする。
 ジップロック越しでも手のひらにはふんわりとした暖かさが伝わってくる。


 ―あぁ、生きたいんだな。―


 翌日この「ビニール入りの凍った鳥」と云う猟奇的でもある光景を発見した嫁の反応も思い浮かべ つい、またダンボールの中に戻してしまった。
 

 で、今。
 野生動物を乳児もいる家の中に連れてきて、衛生上も良くない気がする。
 どのみちこいつは助からん。
 「恐れ絶望の中衰弱死」より「冷凍庫で凍死」の方が早く済んで本人{本鳥}にもベターな筈。凍死って気持ちいいって話もあるし。
 標本は新鮮な方が良い筈
 

 つまり やっぱ やるしかない
 冷静にこの答えを出しなおす為 ブログなんか書いてみてます。

 ごめんね、タシギ。急速冷凍ボタン、押しとくね。ごめんね。





 ケッ生娘かっ 俺っ ぬぅぅぅぅぅ