平地川

 屋久島遡行人さんから一泊二日の沢に誘われる。
 今年やっとこ3回目の沢だが泊りがけと云うのは嬉しい。第二子の誕生も近づいているし、生まれてしまえばきっとしばらく泊まりは厳しかろう。{いや、考えてみればいつまでだ??長男が風呂上り自分で体拭いて服着れる様になるまでか??いつだよそれ??}
 しかし天気予報は下方修正を繰り返し、10月3日当日の朝に泊まりは断念、代わりに
 「日帰りで平地川なんてどうですか?」
 ときた。
 平地川と書いてせいじがわと読むのだと大薔薇さんが云うらしい。


 自分は何度か来た事のある沢だけど、最後に来たのはこの時→{平地川遊び - ざるの洗い方}以来。{うわー新婚クセェ}
 自分の頭の中には{隣の田代川と並んでアトラクション多数の楽しいライトな沢・ただ寒いので真夏向け}と云う記憶のみ。
 一泊二日が小さくなったな、なんて思いつつもまぁ、入渓。

 ↑海より現る遡行人さん
 解っていた筈が、この沢は初っ端から泳ぎアリ。うっかりポッケで鍵と携帯を水没させて鍵のリモコンが死亡。{涙}

 一本橋ありーの

 こんな感じーの

 で、前回引き返した↑この先、またやな感じの所を抜けた後で

 ハイこの滝ドン!
 ちゃんとハーネスもロープも全部持ってきておきながら 壁を登ると言う覚悟が自分の中に無かった事に今更気付く。
 水流に足を漬け 遡行人さんのビレイをしつつ、徐々に体を冷やしながら 脳味噌の中の階段を駆け下り、埃の積もった扉を叩く。叩く、たたく。
 しまいに扉を蹴破って布団に包まり寝ぼけた男にビンタをかます
 白く太った彼こそが、もう一年程も忘れ去られていた私・カンザキの登攀魂「のぼる君」なのであった。
 そんな事をしている内に、遡行人さんは滝横の壁を登りきってしまった。
 体は冷え切って震えている。のぼる君はまだまだ寝ぼけている。
 ごたごた考える間にも動かないとどうしようもない。淵を泳いであちらに渡り、壁に取り付く最初の数手がまたいやらしい。
 とはいえ手を伸ばせばガバホールドがそこにある。足は無いけどとにかく腕力でしがみついて体を引っ張り上げる。
 「きゅぅぅ」
 最近箸より重いものを持ち上げた事が無い右中指が即刻ストライキに入ろうという直前にレッジに上がる。
 ぐぬぅ・・登り始めてみると意外とちゃんとホールドがあっていい感じ。なのにのぼる君が・・また布団に入ろうとしている!!
 しかたが無い。のぼる君無しの素の自分、ペンネームは“あんしんパパ”が残りを登り、一回懸垂降りしてリュック二つ担いでゴボウで登り返した。{コレが一番しんどかった!2対1ででも引き上げたら良かった・・}  


 その後も遡行人さんは

 横を行ったら楽なんだけど、ノーチョイスで中央突破!
 モチベーションが違う。
 あぁ、だから俺は色々中途半端なんだよなぁ、ギターだってバイクだってうどんにせよ写真にせよ、登山・クライミングにバックパッキングも。色々手を出して結局どれにも絞れない。
 なかなか「コレ」と決められない、決めてもどこかで緩んでゆく・・・

 この川には使われなくなった農業用であろう取水堰が何箇所かある。うちにある弾かなくなったギターと同じだ。
 そんなぐだぐだを考えつつ 県道をくぐってなだらかな地形、炭焼き釜跡{SUMIYAKI, 30.204354, 130.390712, 109.2, WGS84, 12:40:19}辺りで食事。
 暫し進み、地図上標高150m付近の三叉地形辺りがガツン!

 うーんこの地形は見覚えがある気がするけど・・ここまで以前来てないよなぁ??

この左手を斜上しようかと検討するが、巻き。
 で、この滝上部が登れなさそうな滝の連続で 巻きに巻く。{オーバーだけど椨川を思い出す。っても解る人少なかろ}
 これーの

 これーの

↑高感度ノイズ激しいけどコレが三叉の真ん中への別れだったかな??


 そしてっ!!コレ!

 橋付きの滝!
 これはちょっと改めて撮影に行きたい気がする。{どう撮るか悩ましいけど}
 この滝上部の巻きでロープを使う、使わないで二人食い違い、遡行人さんノーザイル先行、ロープを投げ渡して自分はゴボウで渡るとなる。ビビリ。


 その上部、中間部に滝壺を擁したナメ滝。さっきの滝の成因もそうだけど これも一応ポットホールになるのか??

 そして林道下をくぐるトンネルを抜け砂防ダムを抜け、等高線が密になってきた頃、ちょっとしたナメに出会う{写真ナシ}。
 登れるとは思う。が、このホルンフェルスの岩たちは一瞬だけグリップしたと見せかけるのが上手い。落ちたら怪我しそうだ。
 今日全体的にビビリがちな自分は
 「行けるだろうけど・・巻こうかな??」
 遡行人さんは
 「え?大丈夫ですよぉ」
 ま、登りました。
 一人登れば少し安心。自分もやっぱり登る。


 そしてそのすぐ後

 このナメ滝。
 確かにこれも登れそうに見えた。しかしさっきよりもよっぽど高い。時刻は4時前、小雨も降り結構な薄暗さになっていた。
 「うーんロープ無しなら 巻きませんか??」
 「え?自分は無しで登りますよ。じゃぁ・・ロープ末端だけ渡してくれたら上から確保しますよ。」
 「えー・・じゃぁ良いです。自分もロープ無しで登りますよ・・」
 先行しようとする遡行人さんを見ながら 脳内で硬くゲンコツを握り のぼるくんの部屋に向け強く足音を踏み鳴らし下ってゆく。
 すると
 「いや・・・やっぱり確保してもらおうかな・・??」
 「はい。この先また確保が必要な箇所が出たらもう巻きましょうね。」

 
 確保を開始し登り始めると 下から見えてるラインと違う、えらいロープの流れが悪いラインをじっくり登ってゆき、上の方でハーケンを打ち「ロープ出して!」と叫び、スラブ上をコケの塊がコロコロと転がり落ちてくる。
 そして一歩上に体を引き上げたその時、ズルズルと遡行人さんが滑り落ち、自分はとっさにしゃがんでテンションをかける。
 ふぅ〜確保してて良かった〜
 しかしまぁ自分の番になって登り始めると 一歩踏み出した時に見た感じと違うのが直感できる。
 さっきフォールを止めたハーケンなんて回収作業に留まるのがホント嫌な、スタンスの狭い場所だった。 
 面白い川とは知っていたが、ここに来て山場があるとは思ってなかった。

  
 この上部、

 急登を登ったところがまた切れ込んだ連瀑。もうそのまま南にトラバースして登山道に出たかったがそこは遡行人さん、拘って可能な限り川近くを巻いてガレ場も抜けて登山道着、時間は5時。
 結構暗かったので一応ヘルメットにヘッドライトも装着し、もう地図ではなくGPSを見ながらぐいぐい下って林道へ合流。

 この辺りはしっかりした林道でも国土地理院地図に全く載っていない物が多いし、林業の都合次第で道のはやり廃りもはげしそうだ。遡行人さんが以前、まさにここで迷って大変な目に遭ったというのも解る。
 ↑今回も地図に載っていない林道が載っている物よりコンクリで固められてそれらしくなっていた。
 そのうちバイクで林道のGPSトラックデータ集めてみようかなぁ。欲しがる人は少数だろうけど・・・