翁杉倒れる

 昨日沢登りの帰り、携帯に事務所からの着信が入っていた。
 大体において良い知らせではない。
 うーんと唸って掛けてみた。
 「翁杉が倒れたらしいんだよねぇ〜、うん、根元からポッキリ。で、昨日仕事行って今日休みなのかんちゃんだけでさ〜、何かおかしいところ無かった?」
 寝耳に水だった。
 いつもどおりの翁杉だったが、まさか。


 と、言う事で今日はザックに 重い一眼レフをしのばせた。

 もうこんな所から?と言う辺りからヤクスギの香りが漂い始め、森の明るさの違いはけっこうな遠くから 早くも感じられた。

 うわー

 これは

 すごい喪失感のある景色。

 もう、この一角の光の向きが全く変わってしまった。一夜にして違う場所と言える。

 今日一日は諸行無常をかみしめながら、仕事中ながら明日には変わっているかも知れない風景を沢山写真に収めて来た。

 帰ってきてみると林野庁が休日出勤してきた後のようだった。

 手当てどんぐらい出んのかな?とか考えない。


 帰ってきてみるとどうも全国ニュースになっていた様でびっくりした。
 mixiではトップのニュースになっている。
 関連日記を見ていると ポツポツと見受けられたのが 「世界遺産になって人が押し寄せたしわよせなのではないか?」と言うもの。
 それはたしかに全く無いわけではない一面なのだけど、ただの一面にしか過ぎない。

 
 翁杉の名前の由来は その風格ではなくそこからかつて翁岳が見えたからなのだそうだ。それが一体どう云う意味なのかはよく想像してみないと解らない。
 周りに生えている木々が大体ひょろっと細いのはつまり、すごい若い森だとと言う事。時を遡ればあそこが伐採の境界だったろうことが見えてくる。

 彼はそれまであった隣人達を切りつくされ、周辺とのつながりを断ち切り残されてきた。
 今までむしろよく頑張って生きて来たと言える。

 ↑これは大株歩道入り口。今の方がよっぽど茂っているのが判る。{2枚とも昭和40年代の写真です}


 犯人探しをするならば誰なのでしょうか?
 木を切ってしまった林野庁?樵さん?木材を買った業者、その木で家を建てた大工さん、住んだ住人・・・トイレで紙で尻を拭いた人? 
 自分ではない誰かのせい、では無いと思う。


 ・・・明日も縄文杉行ってきます。