重石

 仕事として縄文杉コースに行く様になってもう5年ほどになるのだが、未だにはじめて気付く事がボチボチあったりする。
 それは新しい目線を徐々に得ている証拠だ。偉いぞ俺。

 まぁ毎年新しい植物の花を「発見」して帰って図鑑を開いてみるとそこに何年前の折り目が入っていたりもするのだけれど。

 
 何年か前に縄文杉コースのトロッコ道某所で休憩していたら水晶を見つけた。
 トロッコ道上だからまぁそこにある石は近かれ遠かれほぼ何処かから持ってこられたものの筈。
 小杉谷に人々が暮らしていた頃には愛子岳の頂上に水晶が沢山あり、子供達が良く採りに行っていた様な話を聞いた事がある。
 集落が閉じられる時、誰かが思い出と共にここに置いて行ったのだろうかなんて思っていた。

 が。他の石を見つけてどうもそうではない様に思えてきた。


 左下がその水晶。ほかにもよく見ていると正長石とは違う白さの石があり、手にとって見ると石英だと分かる。{右下}
 問題なのは上の二つ。
 石英の中に黒い鉱物が入っているが、屋久島でこう言うのがあれば大体 電気石トルマリン}か重石となる。
 まだ自分も胸を張って判別できないのだけど、師匠の言葉によると「ガラスの様な光沢がある針状の結晶はトルマリン」で「金属的光沢のひじき状の物が重石」の筈。
 これはきっと重石だ。


 図鑑を開くと「重石とはタングステン鉱の意味で」と始まり 大別して二種の鉱石が載っている
 屋久島に産出するのは鉄マンガン重石。
 是非見てみたいのはもう一つの方、灰重石。
 紫外線照射をすると光るというのだ。
 坑道内で青白く光ると言えばアナタ! 飛行石ですよラピュタですよ!
 と勢い余って小型ブラックライト灯を買って色々照らしに行って見たりしたのですが当然何も光りません。


 さておき母岩の付いた物を見ると、恐らく仁田鉱山のズリ石らしい。道路の敷石に使われた旨は郷土史にも記載があったかと思う。
 トロッコ道自体が日本の戦後復興を支えた近代文化遺産的な物だが その下にはもう一つ、屋久島のかつての活況を支えた歴史的遺産が眠っていたのだと思うと何か特別な感情が沸いて来る。のは自分だけでしょうか?